自作のC言語は64bit Linux上で動かすことを前提としているが、他のプラットフォームでも動くのであればなおよい。 以前はコンパイラから直接実行形式のバイナリを出力していたので難しかったけど、いったんアセンブリを出力してそれをアセンブルするように変更したので、 ELFを出力する自作のアセンブラじゃなくgcc(clang)を呼び出すようにすればMac上でも動かせるんじゃないか、とやってみた。
ソースの修正
環境の判別
環境依存で動作を変更したい場合、C言語では定義済みマクロで判定する。
動かしているのがMac上の場合には __APPLE__
が定義されているので、それを使用する:
|
標準関数が未定義になってしまうのを回避
Mac上でソースをコンパイルすると snprintf
が未定義でコンパイルに失敗してしまう。
そんなことあるか?と思ってヘッダファイル /usr/include/stdio.h を見てみる:
#if __DARWIN_C_LEVEL >= 200112L || defined(_C99_SOURCE) || defined(__cplusplus) |
などと #if
で定義が囲まれている。
テスト用のコードを作成して調べたところ __DARWIN_C_LEVEL
は 900000L
だった。
これなら条件は有効そうだが…と思ったら、 _POSIX_SOURCE
を定義していたのが原因だった
(_POSIX_SOURCE
は、Linuxで kill
が未定義になるのを解決するためにMakefile内で定義していた)。
_POSIX_SOURCE
を定義していなければ __DARWIN_C_LEVEL
は 900000L
(_DARWIN_C_FULL
) だが、定義していると _POSIX_C_SOURCE
を参照するようになっていて、
_POSIX_C_SOURCE
は 198808L
となってしまうようだ(<sys/cdefs.h>)。
_POSIX_SOURCE
をMakefile内で一律に定義するんじゃなく、 kill
を使用する箇所でLinux の場合にのみ定義するようにして回避する。
出力するコードの修正
Linux上のgccとMac上のclangが受け付けるアセンブリの形式に違いがあって、C言語をコンパイルして出力するコードをそれに合わせるようにする必要がある。
読み込み専用データセクション
C言語で const
を指定した、読み込み専用で書き込み不可のデータは、Linuxでは .rodata
セクションに配置する:
.section .rodata |
しかしこの書式をMac上のclangアセンブラは受け付けてくれない。
__TEXT,__const
にする必要がある:
.section __TEXT,__const |
グローバルなシンボルにアンダースコアをつける
Linuxの場合にはC言語で定義したシンボルがそのままの名前でアセンブリに出力される。
しかしMacでは前にアンダースコア _
が追加される。
例えば write
という関数を呼び出していても実際には _write
というシンボルを参照することになる。
またC言語標準のエントリポイントも実際に参照されるのは main
じゃなくて _main
となり、C言語から出力するときにアンダースコアをつけてやらないと未定義でリンクに失敗する。
アライメントの指定方法
データを特定の数値の倍数のアドレスに配置するために、 .align
というディレクティブで指定する。
これはそのままMac上でもアセンブルできるが実際には動作が違っていて、指定が合わせたいバイト数じゃなく2の何乗かという意味で解釈される
(或るプログラマの一生 » Mac (Intel Mac) のアセンブラでは .align は .p2align の意味である)。
なので例えば構造体とかのアライメントが崩れて、値がおかしくなってしまう。
そこで .p2align
と出力して、値も2の何乗かを出力するよう変更する。
Linux上で .p2align
が使えるんであればそちらに統一でもいいんだけど、Linuxでは受け付けてくれない…。
以上の修正で、単純なコードならコンパイルして動かせるようになった。